山口県下関市の新聞『人民の星』 5514号から以下引用
岩国自治会長はね殺し事件 米軍は日本人を守らない
九月七日朝七時一〇分ころ、岩国市門前川の畑仕事をおえて帰ろうとしていた恩田美雄氏(六六歳)が、横断していた川沿いの市道で、米軍岩国基地所属の軍属ジェイミー・エム・ウォーレスの運転する車にはねられ、二〇bもとばされて殺された。犯人のウォーレスは倒れている恩田氏をたすけようともせず、車のなかで携帯電話にむかってわめいていたという。恩田氏の救命行為はすべて近くの住民がおこなった。そして事件後、岩国基地はウォーレスが「公務中である」と発表し、裁判権は米軍にあるとただちに公表した。この事件は、日本の主権がアメリカにうばわれており、日本人はアメリカの奴隷のような地位におかれていることを暴露している。
また、事故をおこしたすべての米兵・米軍属の態度がそうであるが、かれらは日本人の命より自分の安全をまもることを第一にしている。
これが「安保条約」で日本をまもることになっている米軍の本質である。
屈辱的な地位協定 犯人は五時間で釈放
この事件にたいし、岩国市の錦南地区住民をはじめ、多くの人人はいいようのない憤りをいだいている。ある住民は「事故は“公務中”と新聞で見た。すぐに軍属の女は釈放された。日米地位協定によって日本の警察では裁かれないという。日本はアメリカの属国のような気がしてならない」と語っている。それは、一人二人ではない多くの人の意見となってひろがっている。
ウォーレスが恩田氏をはねとばし殺した事件について、アメリカ政府や米軍、岩国署や日本政府、マスコミの対応は異常といえるほど迅速かつ狡猾であった。
駆けつけた住民が恩田氏に声をかけ、ウォーレスの車をとりかこんで基地に逃げこまないようにし、救急車に連絡してのち、警察の車七台と救急車一台がきた。岩国署は自動車運転過失致傷の疑いでウォーレスを現行犯逮捕し、二時間後、恩田氏が亡くなってからは同致死にきりかえたものの、五時間後には「素直にはなしている」としてはやばやと釈放した。
同日昼頃にはテレビニュースがこの事件をおどろくほどはやくとりあげ、「恩田氏が突然市道にでてきた」「(ウォーレスは)見えにくい場所で発見がおくれたといっている」と報道し、恩田氏にも責任があり、道路も見えにくかったという岩国署発表のウォーレス擁護の主張を大大的に報道した。
その一方で防衛副大臣・榛葉や防衛省の役人がいちはやく「お悔やみ」にきた。
翌八日、『中国新聞』が「(岩国署は)横断歩道のない片側一車線。恩田さんは河川敷側から横断中だったと見ている」と、横断歩道をわたっていなかった恩田氏にも責任があるとにおわせる岩国署発表を掲載し、同日の『朝日新聞』は朝刊で一段ベタ記事扱いとし、極力人目にふれず、事件が大問題化しないようにした。「朝日」はあわせて、「見えにくい場所で発見がおくれた」という岩国署発表のウォーレス発言を宣伝した。
事態沈静化のための米軍、政府の動きは大がかりだった。
同八日には米軍岩国基地報道部が「ウォーレスは公務中であった」と発表した。「日米地位協定」では「公務中」は米軍に裁判権があり、補償は日本政府がおこなうと規定されており、ウォーレスは日本では裁判をうけないばかりか、日本政府が資金をだして補償せよという方針を公然とだした。
本質をもみ消す米軍と政府
八日の通夜には、外務相・岡田が生花をだした。九日の告別式には、防衛相・北沢、防衛副大臣・榛葉、広島の防衛局長、岩国の事務局長、米軍関係者が花輪をだし、ウォーレスは夫とともに出席し、それに通訳、渉外担当官とおぼしき米軍関係者が出席し、ウォーレスの夫は、「すみません、すみません」と平身低頭意して手をあわせ、殊勝な姿を披ろうするパフォーマンスまでやった。
こうして、恩田氏をはね殺した事件で、岩国市民、愛宕山周辺住民の怒りが爆発しないように、米軍、政府、岩国署、マスコミはグルになって事態沈静化に奔走した。そしていつものように、日米地位協定をつかって、裁判権を日本側からうばいとり、補償は日本がやれという処理方式をすすめようとしてきたのである。
事故をおこしたのは日本の公道である。そこで日本人がはね殺された。しかも犯人はたすけようともしなかった。にもかかわらず、日本国が犯人を裁くことができない。まさに米軍は日本人にたいして“切り捨て御免”である。米軍は日本人を殺す権利をもっているかのような対応である。米軍は「日米安保」と「日米地位協定」によって特権的地位を保障されているのである。この屈辱条約・協定を破棄しないかぎり、こうした事件はつぎつぎと発生するだろう。
問題は、それだけにとどまらない。沖縄・読谷村で日本人をひき殺した米兵も、裁判のなかで「被害者は通行車に自己の存在を知らせる服を着用しなかった」とひき殺された日本人に落ち度があったかのように主張し、「鳥や、飛行機から落ちてきた部品にぶつかったかと思った」と日本人を鳥や飛行機部品とまちがえたと途方もないうそでおしとおしている。読谷の事件も岩国の事件も、まったく日本人の救助をする気がなかった点で共通している。そして米兵・米軍属は自己弁護にきゅうきゅうとしている。それはかれら個人の性癖ではなく、まさに在日米軍が今日でも日本に原爆を投下して進駐してきた占領軍の性格がいささかもかわっていないということをしめしているのである。
売国奴である岩国署、日本政府、ブルジョア・マスコミはこのことを容認し、アメリカにひれふし、アメリカ側にたっている。かれらもまた日本人民をまもることはないのである。
「安保」条約と地位協定によって、アメリカは日本中に基地をおき、米兵・軍属はどのような犯罪をおかしても罪にとわれない。犯罪をおかした米兵にたいして日本は主権を行使できず、米兵は基地ににげこみ、本国に逃亡するのである。日本はアメリカの植民地天国である。このことによって、岩国と日本全国で、どれだけの人人が殺人、強姦、強盗・窃盗などの犯罪の犠牲となり、民族的屈辱をなめさせられてきたか数知れないのである。
恩田氏の死にむくいるためにも、「安保」条約と地位協定を破棄し、米軍基地を日本からたたきだし、平和で安心して暮らせる独立日本をつくらねばならない。
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